No. 10 「アフリカの現代アート」
2002年5月19日

(ティンガティンガはアフリカン・アートの代表選手) |
タンザニアの代表的なアートといえば、木彫りのマコンデが有名だが、もうひとつ、マコンディに優るとも劣らないデフォルメを特徴とする絵画、ティンガティンガがある。
地元のアーティストが我が家のために描いてくれたのが左の絵で、背景にキボ(左)、マウェンジ(右)の二つの峰が見える。実際にはキボの方がかなり高いのだが、仲良く頭を並べている図もなかなか良い。動物たちのデフォルメが特徴的なティンガティンガだが、特に中段左側のインパラあるいはシカレイヨウは、黒い体に赤い目が怪しくていい。(く)さんが作っている料理の本の表紙用に描いてもらった絵なので、動物の間に家庭で使ういろいろな道具類を配している。一本の木をくりぬいて作ったイス、トウモロコシや米を搗く杵と臼、スプーン、素焼きのなべ、ひょうたんを使った柄杓や容器。プラスチックなどの工業製品が多くなったタンザニアの家庭だが、これら伝統的な道具類はまだまだ日常的に見られる。左下の壷などは、実際に持ってみればわかるが、底部を腰に乗せ、くびれたところに腕を回して水や食べ物を運ぶのにちょうど良い形に作られている。
1960年代、故エドワード・サイディ・ティンガティンガさんが、この絵のようなスタイルで描き始めたことから、ティンガティンガ呼ばれるようになった。ティンガティンガさんの絵は、まったくの自己流だったそうである。そのユニークで鮮やかな意匠は、その後多くの若いアーティストたちを刺激し、引き継がれた。左の絵を描いたモシのマリカさんもその仲間の一人で、実際にティンガティンガさんと一緒に仕事をしたこともあるそうだ。師弟関係はなく、人の画風を模写しながら、やがて自分のスタイルを作り出すのが、ティンガティンガなのだという。マリカさんの絵に強烈なインパクトはないが、どこかほのぼのとしたものを感じるのは、ライバル意識よりも仲間意識が作り上げるおおらかさのためだろう。そして、それがマリカさんのスタイルにもなっている。
ダルエスサラームにはティンガティンガのアーティストたちが集まって作った協同組合もあり、作業をしながら絵の販売をする工房を持っている。ダルエスサラームを訪れたらぜひ覗かれるとよい。日本にはマコンデ美術館というところがあり、ティンガティンガを見ることができる。今年、東京の世田谷美術館では、アフリカ現代アートの展示も行われた。ヨーロッパを中心にアフリカのアートは市民権を得つつある。日本でもそう遠い話ではないだろう。(き)
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